FXで投資をしている方はとくに2022年の歴史的な円安に驚かされたことでしょう。
「損をしないためにも何かヒントがほしい」
「為替が動く傾向を知って、利益につなげたい」と考える方は多いはずです。
今回は投資のヒントにもなる指数のひとつ「消費者物価指数(CPI)」について分かりやすく解説します。消費者物価指数(CPI)はインフレに関連する指数であり、為替が動くひとつの要因でもあります。知識を身につけて投資に活かしていきましょう。
消費者物価指数(CPI)とは
消費者物価指数とはモノやサービスなどの物価の動きを示す指標で、CPIともいいます。世界各国でも採用されており、日本では総務省が毎月20日前後に発表しています。
インフレの動きを捉えられるため、日本銀行が金融政策の判断材料とするほか賃金や家賃の改定の際にも参考とされる指数です。
消費者物価指数は基準時を100として計算されます。いろいろな商品が入った買い物かごを想像すると分かりやすいでしょう。
【買い物かごの総費用】
- 基準時:30万円
- 現在:31万5,000円
- 消費者物価指数:31万5,000円 / 30万円=105.0
この場合は基準時とくらべて5%の物価上昇を表します。
また消費者物価指数は次の3つに分かれます。
- 総合指数
- コア指数(コアCPI)
- コアコア指数(コアコアCPI)
一般的には上の図の左が「コア指数」、右2つが「コアコア指数」として扱われます。メディアや記事によって定義が異なるため注意しましょう。
生鮮食品やエネルギーは天候や季節、市況などの要因で価格が大きく変動する場合があり、総合指数からの除外によってより正確な物価の動向を読み取れます。
インフレーション(インフレ)とは
インフレとは物価が継続的に上昇する状態です。インフレには良いインフレと悪いインフレがあり、経済は良いインフレ下で成長していきます。
また物価が短期間で数倍、数十倍にも急騰するハイパーインフレに陥ると、国は破綻する可能性があります。だからこそ中央銀行(日本なら日本銀行)は物価の管理に注力するわけです。またインフレ下では、金融政策として利上げがおこなわれるケースがほとんどです。
良いインフレ
賃金の上昇をともなうインフレが「良いインフレ」といわれます。
【良いインフレ下で起きる循環】 商品の価格が上がる→企業が儲かる→社員の賃金が上がる→人々の消費意欲が高まる→商品が売れる→企業が儲かる→・・・ |
わたしたちの賃金・収入が、物価の上昇以上に増えるかがポイントです。
悪いインフレ
原材料やエネルギー価格の高騰といった、コスト増によるインフレです。
【悪いインフレ下で起きる循環】 コスト増→企業は商品の価格を上げても利益が出ない→企業の業績悪化→社員の賃金は上がらない→家計が苦しくなる→商品は売れない→企業は利益が出ない→・・・ |
悪いインフレでは物価が上がっているのに賃金が上がらず、家計は圧迫されます。
デフレーション(デフレ)とは
インフレの逆で、物価が継続的に下落する状態です。人々の消費意欲が低い状態が続くと、値下げしても商品が売れず不景気になります。企業の業績悪化により減給やリストラが増え、人々はより消費を控えるようになります。
消費者物価指数(CPI)が為替に与える影響
消費者物価指数が上がった(下がった)からといって、為替が上がるのか、下がるのかは一概にはいえません。各国の経済状況や、金利の動きにもよるからです。消費者物価指数がその国にとって良い方向に動いているかを判断しましょう。
また為替は2国間での通貨の交換レートです。たとえばある通貨が日本円に対しては高くなっても、米ドルに対しては下がる場合もあります。
2023年2月 アジア・マーケット・マンスリー(三井住友DSアセットマネジメント)
上のチャートはベトナムドンの円・米ドルに対する推移です。2022年は10月頃まで、総じてどの通貨も米ドルに対しては安くなりました。米ドルが高かった相場で、ベトナムドンも同様です。しかしこのチャートを見ると分かるように、ベトナムドンは日本円に対して高くなっています。
為替が上がりやすい(強い)ケース
高くなりやすい通貨の特徴は次の2つです。
- 経済が安定している
- 金利が高い
自国の通貨よりも金利の高い通貨を持てば、利息が多くつく旨みがあります。国の経済が安定していて金利の高い通貨は買われやすくなり、結果として上昇しやすくなります。
上のグラフはアジア各国の通貨の、米ドルに対する2022年1月~2023年2月の動きです。2022年10月まではすべての通貨が下落しましたが、2022年10月以降は持ち直しているのが分かります。理由はおもに3つあります。
- インフレの過熱感がピークを迎えたとみられる
- インフレに対処するため金利を継続的に引き上げている
- 経済成長が加速している
(2022年の3.8%から2023年は4.2%に上昇する見込み、日本は2022年1.1%)
アジア各国では過熱していたインフレが落ち着くとみられます。世界経済が停滞・減速するなかで成長の勢いや金利の高さが要因となり、2022年に下落した分を取り戻しつつあります。
為替が下がりやすい(弱い)ケース
政治的に不安定な国や経済状況がよくない国の通貨は安くなりやすい傾向にあります。経常収支(海外との貿易や投資などから得た稼ぎ)が赤字である、外国からの借金が多い、利上げしてもインフレが抑えられないなど要因はさまざまです。
日本円と米ドルの2022年の推移を見てみましょう。
マーケット > 指数・為替・金利 > 米ドル/円(SBI証券)
2021年は1ドル110円程度で推移していた為替が、150円近くまで円安になりました。理由はおもに2つあります。
- 日本の貿易赤字
- 日本の金利の低さ
エネルギー価格が高騰して輸入額が増えた分を輸出による稼ぎでカバーしきれず、日本は貿易赤字・経常赤字に陥っています。さらに日本は金利が低いため、日本円を売って金利の高い米ドルで運用する動きが広がり、円安が進みました。
消費者物価指数(CPI)で投資判断する注意点
世界各国でも重要な経済指標として注目を集める消費者物価指数ですが、投資のヒントにする際の注意点が3つあります。
- 国によって消費者物価指数の内容が異なる
- 発表前後は相場が急変動しやすい
- 消費者物価指数だけで投資判断をしない
それぞれ簡単に解説します。
1. 各国で消費者物価指数の内容が異なる
日本 | アメリカ | ユーロ圏 | イギリス | 中国 | |
発表頻度 | 毎月 | 毎月 | 月2回 | 毎月 | 毎月 |
コア指数 (コアCPI) | 生鮮食品をのぞく | 生鮮食品およびエネルギーを除く | アルコール含む飲食料およびエネルギー除く | 食品・アルコール・たばこ・エネルギーを除く | 食品およびエネルギーを除く |
コアコア指数 (コアコアCPI) | 生鮮食品およびエネルギーを除く または 食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く | - | - | - | - |
上の表に主要国のコア指数、コアコア指数が対象とする品目をならべました。日本のコアコア指数はおおむね各国のコア指数と一致します。
「コア指数」といっても、各国で内容が異なるため注意が必要です。
2. 発表前後は相場が急変動しやすい
消費者物価指数は投資家から大きな注目を集める指標であるため、発表前後は期待や思惑で相場が大きく動きやすい点を頭に入れておきましょう。
たとえば2023年1月、米国の消費者物価指数が発表されると為替相場や日経平均、米国市場では半導体関連株で構成するフィラデルフィア半導体指数などが大きく変動しました。「米国は利上げペースを緩めるのでは」、「円高が進むのでは」との予測や思惑からです。指数の発表日に取引するなら、ふだんよりも慎重に判断するほうが良さそうです。
3. 消費者物価指数だけで判断しない
世界各国で政治や経済の状況はそれぞれ異なります。これまでにも述べてきたように、消費者物価指数の動きのみで投資判断をおこなうのは控えましょう。その国の金利や賃金の動き、消費者物価指数そのものの過去からの流れなどから総合的な判断が大切です。
消費者物価指数(CPI)はFXに有効
消費者物価指数が上がる(下がる)と為替がどう動くか、一概にはいえません。しかし為替の動きに影響を与えるケースも多くあります。各国のインフレ動向、金利の状況、経済の安定性なども含めて判断できればFXでもじゅうぶんに活用できるでしょう。
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